李 先捷 さん
「かやぶきが残る古民家は魅力的。
再生できないものが多いので、大切にしたい。」
李 先捷
From シンガポール To 田辺市龍神村
ご近所さんたちの温かさで彩られた
龍乃原喫茶・食堂。
シンガポールで記者をしていた李さん。日本の政治を勉強するため、東京の大学に留学。卒業後、IT企業で勤めた後、現在は、田辺市龍神村で歴史のあるかやぶきの古民家を改修して、「龍乃原喫茶・食堂」を経営している。古民家はご近所さんが安く改修してくれ、内部の机や装飾品はご近所さんからいただいたもの。
歴史とご近所さんの温かさで彩られた喫茶・食堂では、パスタ、スペアリブ、ハヤシライスなどお料理に合うお茶を各種提供しています。
「日本が好きになって、
そのまま残りました。」
移住前はどこでなにをしていましたか?
李さん:シンガポールで記者をしていました。そこで、日本政治に関するドキュメンタリー映画を製作しようと思って、日本の政治を勉強するために東京の大学に留学しました。 卒業後は、東京のIT企業に勤め、その後田辺市龍神村に移住してきました。
日本の政治を勉強して、卒業後は、なぜ日本に残ったのですか?
李さん:日本が好きになって、そのまま残りました!(笑) 元々日本文化は好きでした。シンガポールでは、日本文化が人気なんですよ!刺身やカツ丼もあるし、高島屋もあります!高島屋では、何が人気だと思いますか?…。伝統工芸品なんですよ。
李さんは日本の何が好きですか?
李さん:私は、日本の「紙」に興味がありました。和紙じゃなくて、凸版印刷などの紙技術です。あとは、お茶にも興味がありました。
東京のIT企業に勤めていて、和歌山県に移住しようと思ったきっかけはなんですか?
李さん:自然の中にお茶の木が残っている田辺市龍神村を気に入ったからです。 お茶に興味を持って、お茶のイベントに参加しました。そこで、龍神村で茶の文化の情報発信をしている森口周さんと知り合ったことがきっかけです。
龍神村には、自然のお茶の木が残っているんですね。
李さん:龍神村の山の上にありますよ!古いお茶の木は後味が残るんです。200年から300年の木が、後味が残るのですが、ほかの地域では、100年以上の木というのがそんなにないんです。
それで李さんは、お茶を出す「龍乃原喫茶・食堂」をオープンしたんですね。
李さん:料理に合うお茶を出そうと喫茶・食堂をオープンしました。料理は、お茶をきっかけに知り合った周さんが作ってくれています。
お茶「東方美人」
メニューを拝見しましたが、お料理も幅が広いですね。
李さん:お肉や魚、パスタやハヤシライスから、シンガポール料理まで幅広く提供しています。お茶は、龍神村のお茶から中国のお茶まで、料理に合わせたものを提供しています。
お店の古民家を見るだけでも価値がありそうですね。
李さん:例えばこの柱(下の写真、左手に写る非常に背の高い柱)は、桜の木でできています。こんなに背の高い桜の木でできた柱は、今は手に入らないし、手に入れるならこれから育てる必要があります。それはすごく時間がかかります。再生できない柱でできているこの古民家はとても貴重なんです。他にも障子の枠など、再生できない部分はたくさんあるので、大事にしたいですね。
コーヒーを振舞ってくださいました
(トップの写真にも写る)今日はお友達が来ていますね。
李さん:大阪の大学に留学している友達です。古民家好きの仲間です。明日、一緒に壁を塗るんです!
「和歌山県は歴史や文化が
暮らしの一部になっている。」
古民家が好きな外国人の方も多そうですね。
李さん:この上に建っている古民家も外国人の方が購入して、民宿を始める予定です。また、(李さんが運営している)YouTubeでは、その古民家までの苔の階段がウケていました。あとは、畳も人気ですね。 外国人には、歴史や文化がウケると思います!和歌山県には、熊野古道がありますからね。それは、大きな魅力だと思います。熊野古道がタッチポイントであり、フックだと思いますよ。
李さんが思う和歌山県の魅力は「歴史や文化」ですか?
李さん:そうですね。あとは、家賃が安いこと、温泉があること(近くには龍神温泉がある)ですね。ほかの地域にも歴史、文化はあると思いますが、例えば、京都はショーウィンドウみたいですね。観光として見てまわって、感動する機会が少ないというイメージです。でも、和歌山県は歴史や文化が暮らしの一部になっているので、それを深く感じることができると思います。 また、熊野古道を歩いている時に出会う人の優しさも感じます。
「田辺市龍神村は、
人を受け入れてくれる場所」
県内でも田辺市龍神村の魅力はなんですか?
李さん:龍神村は、人を受け入れてくれる場所です。昔から多くの移住者さんを受け入れています。
お昼ご飯を食べた「あさひ食堂」(田辺市龍神村)さんでお会いしましたが、店主さんとも親しくお話されていましたね。
李さん:あさひ食堂に来る人はみんな知っています。みんな繋がっています。
一番最初に店内をご案内いただきましたが、お店においてある机などもご近所さんからいただいたとか?
李さん:そうです。まず、この古民家は最初住める状態ではありませんでしたが、近所の大工さんが格安で改修してくれました。障子は、昔龍神村で作られていた「山路紙」をご近所さんが再生して作ったものを使っています。机も使わなくなってものをまた別のご近所さんにいただきました。掛け軸も、箪笥もそうです。
- 改修前のお店
- 「龍乃原喫茶・食堂」の障子
- 「龍乃原喫茶・食堂」の内装
そんなお店でお仕事をする楽しさはなんですか?
李さん:お客さんが喜んでくれることですね。 若い男性のお客さんが、お茶のおいしさに気づいてくれたり、「照明があれば自分の古い家もこんなに綺麗になるかな」とか、店に来て何か感じてくれたのが嬉しかったです。
お店をオープンしたばかりでお忙しそうな李さんですが、休日は何をしていますか?
李さん:今は休みもなく忙しくしていますが、白浜の海や田辺の扇ヶ浜に行きます。あとは、山登りや滝行もします。
李さんは海が好きなんですね。
李さん:飼っている犬が、海が好きなので連れて行くんです。僕は山の方が好きです。シンガポールの山は低いので、日本の山は高くて好きです。
滝行もされるのですか?
李さん:龍神村に来た時に、滝行をさせてもらいました。滝行で、エネルギーをもらいました。人の手を加えていない、自然の状態の滝が良いですね。
「自然の山と人工の山では、そこにいる
動物や音、
エネルギーが違うんです。」
李さんにとって「大切にしているもの・こと」はなんですか?
李さん:自然ですね。自然の山と人工の山では、そこにいる動物や音、エネルギーが違うんです。だから、農薬を使わないとか、ポイ捨てをしないとか…このあたりの川でも捨てられたゴミを見かけます…。皆さんにも大切にしてもらいたいです。
そんな李さんの今後の夢はなんですか?
李さん:まずは、店の前の畑を植物園にしたいです。和歌山県の植物だったり、海外の植物だったり。ベンチを置いて、植物園でお茶を飲めるようにしたいですね。それも植物園の園長である友人が手伝ってくれます。あとは、この店の屋根を杉皮のかやぶきにすることです。本当のかやぶき屋根にしたいんです。 まだあります、近所のララ・ロカレ(就労継続支援A型事業所)とコラボして障害のある方を雇用したいです。あとは、ツアーガイドとして人力車で案内したいですね。龍神村の人力車なので、「龍神力車」です。夢はたくさんあります。
龍神力車は海外からのお客様にも人気が出そうですね。
李さん:人力車は、外国人に人気ですが、実は日本人が多く乗っていますね。日本人にも人気なんです。皆さんに龍神村を案内したいですね。
まだまだ夢が膨らむ李さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。
最後に、李さんにお気に入りの一枚をお願いしたところ、龍乃原喫茶・食堂にて、シンガポールからいらっしゃった李さんのお母様が撮影したお写真がお気に入りとのこと。
李さんのお気に入りの一枚
@龍乃原喫茶・食堂